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#4 結婚する人が減少する理由とは?要因を整理して原因を特定する

前回の記事では、国立社会保障・人口問題研究所の「人口動態統計」最新版に基づき、出生数減少の原因は、「夫婦の数が減っている」要因が大きいことを示した。婚姻件数は、1972年の約110万組をピークに、2022年には約50万組まで減っているのだ。本記事では前回の記事に続き、なぜそこまで夫婦の数が激減するのか、さらに分解した少子化の原因を特定していく。

日本で「夫婦の数が減っている」原因とは?

まず前提として、一般に「夫婦の数」は、結婚適齢期の人口と、その中で結婚する人の割合である。最近は妊娠可能性のない高齢者同士の再婚も多いため、全体の夫婦の数のうち、本稿では「結婚して出産するに適した年齢の夫婦の数」を扱うこととする。また、日本には実は「夫婦の数」という統計がなく、代わりに「婚姻件数」(婚姻届の数)を夫婦の数を代替する統計数値として用いる。

さらに、いわゆる「年の差婚」で男性が高齢な場合も多く、出産するのはもちろん女性であるため、「結婚適齢期の人口」は女性の人口を取り出して分析する。

以上を踏まえ、出生数に影響する婚姻件数は、①結婚適齢期の人口と、②結婚する人の割合の掛け算である。つまり、婚姻件数が減る原因は、「①結婚適齢期の人口が減っている」のか、「②結婚する人の割合が減っている」のか、2つの仮説に分解できる。本稿ではこれらをそれぞれ分析して考察した。

少子化原因の仮説① 結婚適齢期の人口が減っている

まず、「①結婚適齢期の人口が減っている」仮説について見てみる。本稿では出生数に影響を及ぼす結婚適齢期の年齢を、晩婚の進展で40代でも結婚して子供をもうける人々がそれなりにいることを踏まえ、20~40代とした。1995年にはその結婚適齢期の女性人口は2,687万人でピークに達したが、2023年には2,144万人と、約2割減っている[i]

図 結婚適齢期(20~40代の人口合計)の人口推移

少子化原因の仮説② 結婚する人の割合が減っている

次に、「②結婚する人の割合が減っている」仮説について見てみる。結婚する人の割合とは、その年の結婚適齢期人口(20~40代の人口合計)1,000人当たり何組結婚したかを表す割合である[ii]。先の結婚適齢期人口を女性の人口で出しているため、比較のためにこちらの分母も女性の人口で割ることにした。結果、結婚した女性の割合は1970年までは約40%前後で推移していたが、2022年には24.0%と、約4割も減っている。とはいえ2022年はコロナの影響も大きかったであろうから、コロナ前のデータである2015年をみると27.4%、これでも約3割強の減少である。

図 結婚適齢期の女性人口(20~40代の人口合計)1,000人当たりの婚姻率

まとめ

結論として、婚姻件数の減少は、「①結婚適齢期の人口が減っている」ところに、「②結婚する人の割合が減っている」ことが加わって拍車がかかっていることがわかった。また、減少幅としては「②結婚する人の割合が減っている」ほうが影響が大きいようにもみえる。すでに生まれた人々の人口の減少はすぐには止めようがないため、社会経済的取り組みで改善の可能性があるのは「結婚する人の割合を増やす」ことである。

したがって次回の記事では、なぜ結婚する人の割合が減っているのかを分析する。よく言われる①若者の価値観が変化したのか、②経済的な不安があるのか、この2つの仮説に分解し、結婚するかしないかの決断に影響を与える大きな原因を特定していきたい。


[i] 総務省統計局「人口推計 人口推計の結果の概要」
[ii] 厚生労働省「人口動態調査 婚姻」、総務省統計局「人口推計 人口推計の概要、推計結果等」

監修:一般社団法人人口減少対策総合研究所理事長 河合雅司
執筆協力:株式会社Revitalize取締役兼CBP 増山達也・CFO 木村悦久、小村乃子


文責

片桐 豪志

株式会社Revitalize 代表取締役兼CEO

三菱総研、Deloitte、McKinseyを経てRevitalizeを創業。中小企業・SU・イノベーション・産学連携の政策・事業の企画立案・実行支援に強み。一番長くを過ごしたDeloitteではパートナーまで務め、イントレプレナーとして多数の新規事業立ち上げとスケールアップを実現してきた。より根本的な社会課題解決に取り組むべく、創業を決断。