#3 なぜ出生数が減少しているのか?要因を整理して原因を特定する
前回の記事では、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の「日本の将来推計人口」最新版に基づき、日本人の出生数は2023年の73万人から、2100年には約18万人、2120年には約12万人にまで落ち込むことを示した。もはや後戻りできない絶望感を想起させる水準である。本記事では、なぜそこまで出生数が激減するのか、少子化の要因を整理し、原因を特定していく。
日本人の出生数が減る理由とは?
全体の子供の人数というのは単純に考えると、①一組の夫婦から生まれる子供の人数と、②子供をもうける夫婦の数、という掛け算である。つまり出生数(生まれる子供の数)が減る要因は、「①夫婦一組あたりの子供数が減っている」のか、「②そもそも夫婦の数が減っている」のか、2つの仮説に分解できる。本稿ではこれらをそれぞれ分析して考察した。
少子化原因の仮説① 夫婦一組あたりの子供数が減っている
まず、「①夫婦一組あたりの子供数が減っている」仮説について見てみる。結婚した夫婦が生涯でもうけた最終的な子供の数を示す「完結出生児数」は、1970年代から2002年までは2.2人前後で推移していた。2021年は最低値を更新したものの1.9人と、過去50年間で見ると大きくは変わっていない[i]。日本人は全体としては結婚するとだいたい子供を2人もうけるのだ(晩婚晩産、子供を持たない夫婦の増加、一人っ子の増加で徐々に減ってはいるが)。
つまり、「①夫婦一組あたりの子供数が減っている」仮説は、少子化の原因の一つではあるが、大きな原因とは言い難い。
図 夫婦の完結出生子ども数(結婚持続期間15~19年)
少子化原因の仮説② そもそも夫婦の数が減っている
では、「②そもそも夫婦の数が減っている」仮説についてはどうか。婚姻件数は、1972年の110万組をピークとして、2022年は半分以下の50万組まで減少している[ii]。過去50年間で見ると、結婚するカップルの数が激減しているのだ。
つまり、先の「①夫婦一組あたりの子供数が減っている」仮説よりも、明らかに「②そもそも夫婦の数が減っている」仮説の方が、少子化の原因として大きいと考えられる。
図 婚姻件数の推移
婚外子の影響
子供は結婚した夫婦だけから生まれるわけではないため、3番目の仮説として「③夫婦ではない未婚者から生まれる子供の数が減っている」可能性もあるが、そもそも「婚外子の割合」は、一見1975年を底に上昇基調ではあるものの、数値としては概ね2%で推移している[iii]。日本人の約98%は結婚した夫婦から生まれており、夫婦ではない未婚者から生まれる子供の割合は約2%と圧倒的に小さいのだ。
つまり、「②そもそも夫婦の数が減っている」仮説に比べて著しく影響は小さいと考えられるため、「③夫婦ではない未婚者から生まれる子供の数が減っている」仮説が少子化の大きな原因とは言い難いと思われる。
図 婚外子の割合
まとめ
結論として、出生数減少の原因は、「①夫婦一組あたりの子ども数が減っている」ことよりも、「②そもそも夫婦の数が減っている」ことの方が大きいとわかった。
次回の記事では、なぜ夫婦の数が減っているのかを分析する。「①結婚する割合が減っているのか」、それとも「②そもそも結婚適齢期の人口が減っているのか」の2つの仮説に分解できるであろうから、本記事と同様に割合と絶対数のデータを考察していきたい。
参考資料
[i] 国立社会保障・人口問題研究所「第 16 回出生動向基本調査 調査別にみた、夫婦の完結
出生子ども数(結婚持続期間 15~19 年)」
[ii] 厚生労働省「人口動態調査」
[iii] 厚生労働省「令和4年 人口動態統計上巻 嫡出子―嫡出でない子別にみた年次別出生数及び百分率」
監修:一般社団法人人口減少対策総合研究所理事長 河合雅司
執筆協力:株式会社Revitalize取締役兼CBP 増山達也・CFO 木村悦久、小村乃子