#1 日本の将来人口推計からみる日本人の絶滅可能性
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の「日本の将来推計人口」最新版によれば、日本の人口は2050年には1億人、2100年には5千万人を下回ると推計されている。社人研は別推計でその先も予測しているが、2200年には953万人、2400年には43万人、2500年にはわずか9万人程度になる見込みである。 この推計から、2900年には日本人が絶滅する可能性が示唆されている。本記事では、日本の将来人口推計が示す未来について考察する。
日本の将来人口推計
20年後の人口は現時点でほぼ確定しており、人口推計の計算は数十年単位ではほとんど外れない高い確度を持つ。そのため、2100年の人口が5千万人という推計も信ぴょう性が高いと思われる。しかし、問題は2100年に5千万人で安定するのではなく、その先も人口が減少し続けることである。さすがに遠すぎる2900年まで見なくとも、2200年の953万人、2400年の43万人という数値は、日本人がほぼ絶滅状態になることを意味するであろう。
厳しい前提条件での人口推計
この図の2120年までの推計値は、出生低位・死亡高位という最も厳しいパターンの推計結果を用いている。社人研の人口推計は5年ごとに発表されるが、前提条件が甘いためか、毎回下方修正される傾向にある。そのため、楽観視するのは危険であり、出生低位・死亡高位のシナリオで見てみておいたほうがいいというのが弊社の見方である。さらに、2200年以降の推計は出生率や死亡率を一定とするという前提を置いているため、実際にはもっと早く人口が激減するのは想像に難くない。
労働市場と経済活動への影響
労働力人口の減少は、経済活動にも深刻な影響を及ぼす。特に労働力人口である20歳から64歳の層の減少が顕著であり、20歳未満の若年層の減少も著しい。労働力の供給が不足し、企業の生産性が低下する可能性が高い。また、労働市場の縮小は、イノベーションの減少や企業の国際競争力の低下を招く可能性もある。これにより、社会の活力が低下し、国内経済の成長が停滞し、さらなる経済的な困難に陥っていく悪循環に入っていくことが予想される。
現在の経済政策の限界
近年、日本ではDX(デジタルトランスフォーメーション)による生産性向上や賃上げ、利上げ、円安誘導による海外競争力強化などの各種の経済政策が実施されている。しかし、これらの経済政策は短期的には効果があるかもしれないが、根本的な構造課題を解決するものではないため、数十年単位でみればここまで急激な人口減少に対して、焼け石に水程度の効果しかないと思われる。
日本は「失われた30年」と言われるように、過去30年間ほとんど経済成長していない。本記事執筆時点ですでに34年目に入っている。人口規模≒経済規模という経済構造において、ここまでの人口減少は生産性向上だけではカバーしきれない大きな問題である。
「人口規模の維持」がカギ
今後、日本人が絶滅の危機を回避するためには、縮小していく経済規模の中でいかに社会をコンパクトに畳んでいくかという「適応戦略」と並行して、人口規模を維持する「抗う戦略」も重要な論点となる。次回以降の記事では、なぜここまで人口が激減してしまうのか、その真の原因を特定していきたい。
まとめ
日本の将来人口推計によると、2050年に1億人、2100年には5千万人を下回り、2900年には日本人が絶滅する可能性が示唆されている。労働力人口の減少は経済活動に大きな影響を及ぼし、将来的な社会の活力低下が危惧される。
経済政策としてのDX推進や賃上げ、利上げ、円安誘導などは短期的には効果を見込めるかもしれないが、急激な人口減少という問題に対しては限界があると思われる。今後、日本人が絶滅の危機を回避するためには、「人口規模の維持」のための合理的なアプローチが重要な論点となる。
2120年まで:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)出生低位(死亡高位)推計」
(https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp_zenkoku2023.asp)
2200年以降:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2023)改訂版 表3-8 2022年出生率,死亡率一定による人口指標」
(https://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2023RE.asp?fname=T03-08.htm )
監修:一般社団法人人口減少対策総合研究所理事長 河合雅司