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#5 若者が結婚しない現実に隠された「残酷な真実」とは?

前回の記事では、総務省の「人口推計」と厚生労働省の「人口動態調査」最新版に基づき、日本の少子化の根本原因は婚姻件数の激減であり、「結婚する人の割合が減っている」ことが大きく影響していることを示した。結婚適齢期の女性(20~40代)の婚姻率は、1970年までは約40%前後で推移していたが、2022年には23.6%と、約4割も減っているのだ。本記事では、なぜそこまで結婚する人の割合が減っているのか、その原因を特定していく。

若者が結婚しなくなった原因とは?

「なぜ最近の若者は結婚しなくなったのか?」これは現代社会が抱える大きな疑問である。世間では「価値観の変化」「女性の社会進出」「出会いの減少」など、さまざまな意見が飛び交っている。本稿では、若者の婚姻率低下の原因を明らかにするため、若者が結婚を決断する際に影響を与える要素を①価値観の変化、②年収の影響という2つの仮説に分解した。

仮説① 価値観の変化

まず、①価値観の変化について見てみる。国立社会保障・人口問題研究所の「未婚者の結婚意思調査結果」を見てみると、「一生結婚するつもりはない」と考える18~34歳の未婚者の割合は、男性は1982年の2.3%から2021年では17.3%へと約8倍になった[i]。女性も、1982年の4.1%から2021年は14.6%へ約4倍に増えている。
これらは倍率だけ見れば大きいようにも見えるが、「いずれ結婚するつもり」と考える18~34歳の未婚者の割合は、男性では、1982年の95.9%から2021年81.4%まで減ってはいるものの40年間で80%以上を維持している。女性も、1982年の94.2%から2021年の84.3%まで84~94%の間で推移しており、こちらも同様の傾向である。

図 未婚者の結婚意思調査結果

仮説② 年収の影響

次に、②年収の影響について見てみる。内閣府の資料にある年収と結婚の関係を見てみると、30代の男性有業者では年収が低いほど婚姻率も低い傾向にあり、経済状況が結婚への障害になっていることは明白である[ii]。年収200万円台の男性で結婚しているのは35.3%と約3割にすぎない。これが300万円台になると49.5%と約半分まで上昇し、「300万円の壁」があることが推察される。さらに年収が600〜700万円台になると男性では78.6%、800万円以上になると8割超が結婚している。
このデータからは、年収が一定以上ある男性が結婚しやすいことがわかるが、逆にいえば、年収が低い層にとっては結婚が大きなハードルとなっていることを示している。すなわち、収入の不安定さや生活基盤の不確実性が結婚の決断を遅らせる原因の一つになっていると考えられる。

図 男性(30代有業者)の年収と婚姻率(%)

まとめ

結論として、若者の婚姻率の低下は、①価値観の変化よりも②年収の影響が大きな影響を与えていることがわかった。たしかに「一生結婚するつもりはない」と考える若者は増えているが、「結婚したい」と考える若者の割合は大きくは減っていないため、結婚したいという価値観は昔とそれほど変わっていない。一方で、年収が低いほど婚姻率も低い傾向にあることを踏まえると、「若者の収入を増やす」ことが重要である。

したがって次回の記事では、「お金がない若者」の実態をさらに掘り下げて分析し、その背後にある課題を特定していきたい。


[i] 国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査 調査別にみた、未婚者の生涯の結婚意思」
[ii] 内閣府「令和5年度 年次経済財政報告」(https://www5.cao.go.jp/keizai3/whitepaper.html

監修:一般社団法人人口減少対策総合研究所理事長 河合雅司
執筆協力:株式会社Revitalize取締役兼CBP 増山達也・CFO 木村悦久、小村乃子


文責

片桐 豪志

株式会社Revitalize 代表取締役兼CEO

三菱総研、Deloitte、McKinseyを経てRevitalizeを創業。中小企業・SU・イノベーション・産学連携の政策・事業の企画立案・実行支援に強み。一番長くを過ごしたDeloitteではパートナーまで務め、イントレプレナーとして多数の新規事業立ち上げとスケールアップを実現してきた。より根本的な社会課題解決に取り組むべく、創業を決断。