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#2 日本の人口が減る理由とは?出生数の激減ぶりを理解する

前回の記事では、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の「日本の将来推計人口」最新版によれば、日本の人口は2050年に1億人、2100年に5千万人を下回ると推計されていることを示した。さらに、このままでは2400年に43万人、2900年には日本人が絶滅する可能性があることも示した。本記事では、なぜそこまで急激に人口が減るのか、その原因を解説する。

日本の人口が減る理由とは?

人口は当然ながら、生まれる人数と亡くなる人数の差で決まる。生まれる人が亡くなる人より多ければ人口は増え、少なければ減る。
日本の人口は、縄文、弥生時代から2000年代まで数度の増減はあったものの、ほぼ一貫して増え続け、2008年に1億2808万人でピークに達した。しかし、2023年には1億2435万人とピークから約370万人、約3%減った。この程度の減少幅では、社会的な変化は体感しにくいであろう。

ところが、前回の記事で述べたように、ここからの減少幅は急激であり、2100年には5千万人を下回り、その先も減り続ける。その理由は出生数が減るからであり、またその減少幅が急激であるためである。

出生数の推移

日々忙しく暮らしていると意識することはないが、1970年以降の日本人の出生数は1973年の209万人をピークとして、2023年には3分の1の73万人まで減少している[i]。今後も出生数は減り続け、社人研の出生低位・死亡高位推計によれば2030年に63万人、2050年に45万人、2070年に31万人、2100年に18万人、そして2120年には12万人と1973年の6%弱にまで減少する[ii]

この急激な出生数の低下が、2100年には日本人口が半分以下と日本人口が急激に減少する真の原因である。このままいけばその先も減り続けて止まらないことは容易に想像がつく。

図 日本の将来出生数推計

世代別の人口推移

総務省の人口推計[iii]によれば、2023年10月1日現在の60歳の日本人人口は約153万人、50歳は約199万人、40歳は約146万人いる。上の世代ほど同年齢の人口が多いため、少子化を自分事として意識しにくいかもしれない。しかし、すでに30歳は約117万人、20歳は約111万人しかいない。いま社会で活躍している責任者層の方々は、「新入社員が少ない」、「若い労働力の不足」は実感しているであろう。

さらに、10歳は約100万人、2023年に生まれた0歳の子供たちは約73万人しかおらず、いまの50歳の人々の4割以下しか生まれていない。10年20年後に働き始める若者は一段と少なくなるため、人出不足感は年々強まり、若者の獲得競争はより一層激しくなる。

出生数が減る影響

出生数が減れば育つ若者が減り、社会の全分野に深刻な影響が出る。特に、警察、消防、自衛隊、運送業、建設土木業といった体力仕事や、若者の柔軟な発想が必要なイノベーションの分野などが影響を受ける。現在20歳の若者は約111万人だが、16年後の2040年には約85万人となる。2050年には約63万人に減ると推計されている。戦力としての若者のリソースが貴重になるだけでなく、子供を産み育てる人口も激減する。

そして現代社会は、若者から高齢者へ資源を再配分する仕組みが構築されているため、富は高齢者に集中し、若者は吸い上げ続けられる。この急激に減っていく若者人口からさらに社会保障費と税金を吸い上げ続けるという、なんという苦しい仕組みになっているのか・・・。この持続不可能性からして、日本は完全に人口減少の悪循環コースに入っていると考えてよい。

なぜ出生数が激減するのかを掘り下げて考えるべき

しかし、ここで「出生数が減って人口が激減するから適応しよう」という考えと並行して、もう何段か「なぜ出生数がここまで急激に減ってしまうのか」を掘り下げるべきであると、弊社としては考えている。
人口急減に備えて社会をコンパクトに畳んでいく「適応戦略」は重要だ。これを短期間に成し遂げる必要がある。このままいくと日本は2200年には人口1千万人程度、2400年には人口43万程度という、極東にある小国になっていくため、この激減に耐えうる社会への作り替えが必須である。
並行して、そもそも出生数をここまで激減させる原因を少しでも取り除き、出生数の減少がいつか底を打つことを期待し、その可能性を少しでも上げる努力も続けていかなければならない。

次回の記事では、それではなぜここまで出生数が激減してしまうのかを説明し、少子化の原因を引き続き掘り下げていきたい。

まとめ

日本の人口は2008年に1億2808万人でピークに達したが、2023年には約1億2435万人に減った。1973年の出生数は209万人だったが、2023年には73万人に激減したことが主な原因である。さらに、今後も出生数は減り続け、2100年には20万人以下になる見込みだ。

このような若者の減少は、社会全体に深刻な影響を与え始めている。そのため、社会を畳む「適応戦略」と並行して、出生数減少の原因を取り除き、底を打つ努力を続けることが重要である。


参考資料
[i] 2023年まで:厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
[ii] 2024年以降:国立社会保障・人口問題研究所「(参考:日本人人口)出生低位(死亡高位)推計(令和5年推計)表6-8(J) 出生,死亡及び自然増加の実数ならびに率(日本人人口):出生低位(死亡高位)推計」
[iii] 世代別の人口推移:総務省統計局「人口推計」

監修:一般社団法人人口減少対策総合研究所理事長 河合雅司
執筆協力:株式会社Revitalize取締役兼CBP 増山達也、小村乃子


文責

片桐 豪志

株式会社Revitalize 代表取締役兼CEO

三菱総研、Deloitte、McKinseyを経てRevitalizeを創業。中小企業・SU・イノベーション・産学連携の政策・事業の企画立案・実行支援に強み。一番長くを過ごしたDeloitteではパートナーまで務め、イントレプレナーとして多数の新規事業立ち上げとスケールアップを実現してきた。より根本的な社会課題解決に取り組むべく、創業を決断。