#11 2070年の世界GDPとランキング予測 日本は10位に後退

前回の記事では、IMF, World Economic Outlook Database, October 2024および総務省「令和5年度 ICTの経済分析に関する調査」に基づき、各国が経済的困難を抱えながらも成長を続ける中、日本だけが停滞している大きな原因として「市場開拓の努力不足」を提起した。人口減少による経済規模の縮小という大きな全体動向に押し負けていることが示唆された。
これまで人口減少の長期推計には触れてきたが、国内総生産(GDP)の将来見通しは扱ってこなかった。GDPとは、「Gross Domestic Product」の略で、一定期間内に国内で生み出された付加価値、つまり儲けの合計であり、国の経済状況を示す指標である。本記事では、世界の経済規模の推移と日本のGDP順位の変化に焦点を当てて解説する。
日本のGDP順位は今後どうなるのか?
日本のGDPは、どのように推移していくのだろうか。ここでは、①「2070年の世界GDPとランキング」予測、②日本の人口とGDPランキングの関係に着目し、今後の日本経済の位置づけを考察する。
① 「2070年の世界GDPとランキング」予測
まず、図表1のゴールドマンサックスの資料に基づき作成した予測を見てみよう。
図表1 2070年までの世界のGDPとランキング予測

これによると、2035年前後に中国がアメリカを抜いて世界1位となり、2070年までその地位を維持する。アメリカは2位に後退するが、依然として経済規模は大きく、成長も堅調に推移。インドは2020年代に入ってから急成長して3位に浮上し、将来的には中国やアメリカを上回る可能性もある。
一方で、日本は停滞が続き、インドネシアやナイジェリアなどに抜かれ、ブラジルやドイツを下回る10位に沈む。GDPが大きく減るのではなく、停滞し続けている間にほかの国がどんどん伸びて追い抜かれていき、相対的に順位が下がる。人口が急減する中で経済規模を維持する見通しとなっていることは「健闘」と評価できなくもないが、他国並みに成長できなければ今後さらに順位は下がり続けるであろう。
② 日本のGDPランキングは人口減少とともに低下
次に、日本の人口とGDPランキングの関係を見てみる。図表2は、国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計に、上述したGDP予測のデータから日本のランキングを重ねたものである。
図表2 日本の人口とGDPランキングの予測

2100年まで:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)出生低位(死亡高位)推計」
ゴールドマン・サックス・グローバル投資調査部「グローバル・ペーパー 2075年への道筋-世界経済の成長は鈍化、しかし着実に収斂 2022年12月6日 午前10:19 GMT」
今後50年間で日本の人口は急速に減り、それに伴ってGDPランキングも下がっていく見通しである。人口は2020年の1億.2600人から70年には7800万人まで減り、GDPランキングは2020年の3位から、先述したように10位に下がると予測されている。
実人口の減少ペース以上にランキングが下落する見通しとなっている背景には、日本の生産年齢人口の高年齢化があると見られる。近年、日本人の出生数が激烈に減っていることの影響は20年後以降の生産年齢人口の年齢構成をいびつにする。とりわけ年々20~30代の急減はイノベーションを起こりづらくするなど企業活動に甚大な影響を及ぼすと考えられ、結果としてGDPの押し下げ効果に転じる。
なお、2080年以降のGDP予測は現時点で公表されていないが、今回のデータ(2022年時点)を見る限り、全体の傾向に大きな変化はないと考えられる。したがって、2080年以降もさらに順位が下がっていくと考えるのが自然であろう。
今年生まれた子どもたちが40代半ばで責任世代を迎える2070年、日本は「かつての強国」と呼ばれているかもしれない。そうした未来を子や孫の世代にそのまま手渡すのではなく、今を生きる私たちが少しでもその流れを変える努力をすることが、現世代の責任ではないだろうか。
現代社会には、自分と違う価値観を持つ者を排除したり、目先の利益だけで判断する風潮が根強く残っている。それでも互いを認め合い、未来のために行動する意識が広がっていけば、日本はもっと可能性に満ちた国になれると信じている。
まとめ
2070年時点では、人口7800万人、GDPランキング10位と予測されている。人口減少に伴う経済停滞、そしてほかの国に次々と追い抜かれる状況が今後数十年から100年にわたって続くことは目に見えており、本気で対策を講じなければ、日本は国際的な地位の低下を避けられない。
この長期縮小に立ち向かうためには、①ひたすら生産性を上げていけばよいのか、②新規事業開発を日本中で行い売上を高め続けるのか、③革新的イノベーションで人口に依存しない経済構造をつくるのか、④富の海外流出を減らして国内生産を増やすのか、⑤海外市場の成長を取り込むのかなどの戦略が考えられる。
次回以降の記事では、「これらの戦略は現実的に実行可能なのか」を検証していきたい。
監修:一般社団法人人口減少対策総合研究所理事長 河合雅司
執筆協力:株式会社Revitalize取締役兼CBP 増山達也・CFO 木村悦久、小村乃子
