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少子化の抜本策は中小企業の売上拡大である~手取りを増やして若者が結婚を選べる未来へ

はじめのご挨拶

このたびは本冊子をご覧いただき、誠にありがとうございます。日本が直面している少子化は、単なる人口減少にとどまらず、経済や社会基盤に深刻な影響を及ぼしています。2100年には人口が5千万人を下回るという推計もあり、このままでは日本人が絶滅する可能性が示唆されています。

少子化の原因は、ほとんどの日本人男性が働く中小企業で手取りが少ないことにあります。給料が増えない一方で、社会保険料や物価が上昇し続けているため、手取りがますます減っている状況です。その結果、結婚や子育てを選ぶ若者がさらに減り、少子化が加速しています。

子育てしやすい社会制度や環境整備を進めることは重要です。しかし、それだけでは表層的な対策にとどまり、少子化の根本的な原因には十分にアプローチできません。今後日本人が絶滅の危機を回避するためには、縮小していく経済規模の中でいかに社会をコンパクトに畳んでいくかという「適応戦略」と並行して、人口規模を維持するための、根本的に「抗う戦略」も重要と考えています。
具体的には、若者の手取りを中長期的に改善することが不可欠であり、その鍵を握るのが中小企業の売上拡大です。中小企業の売上拡大は、若者の所得向上につながり、結婚や子育てへの意欲を高める大きな原動力となります。

本冊子は3部構成で、この課題の整理に取り組んでいます。第1部では、日本の人口減少の現状を詳細に解説し、第2部では少子化の根本原因を掘り下げます。さらに第3部では、日本の若者の平均年収が低い理由を特定して、中小企業の売上拡大の必要性を解説します。本冊子を通じて、少子化の本質を理解し、縮小社会を乗り越えるための具体的な行動となるヒントを得ていただければ幸いです。

エグゼクティブサマリー

本冊子では、日本の少子化について、根本原因とその対策の必要性について解説する。

第1部 日本の人口減少の現状

日本の人口は2050年に1億人、2100年には5000万人を下回り、その後も減り続けると推計されている。人口減少の原因は出生数の激減であり、1973年の209万人をピークに2023年には73万人、2100年には18万人まで減ると見込まれている。この急激な出生数の減少は、労働力不足や経済の停滞、社会の活力低下を引き起こす深刻な問題である。
現在の政策の多くは根本的な構造課題を解決するものではないため、社会をコンパクトに縮小する『適応戦略』が不可欠。同時に、出生数の激減を引き起こす原因を少しでも取り除き、人口を維持する『抗う戦略』にも取り組むことが重要である。

第2部 少子化の原因

出生数が減る原因は、結婚が減っているためであり、結婚が減っているのは結婚する人の割合が減っているため。その背景には、若者の経済的不安があります。特に『結婚はしたいけどお金がない』という現状が、若者にとって大きな壁となっている。

第3部 日本の若者の平均年収が低い理由

日本の若者の平均年収が低い理由は、大多数の若者が中小企業で働いていることが大きく関係している。中小企業で働く20〜30代男性の平均年収は300~400万円程度。この収入水準では、30代男性のうち約半数しか結婚できていない現状がある。

さらに、給料が増えない一方で、税金や社会保険料が引かれることで、手取りが減っている。生活コストや物価の上昇も加わり、若者が自由に使えるお金がどんどん減っている状況である。このような経済的不安が、若者にとって結婚や子育てを選びにくくしているのも無理はない。

つまり、少子化の根本原因は、結婚適齢期である20~30代の男性の手取りが少ないことにあり、結婚の減少に直結していると考えられる。

この状況を打破するためには、中小企業が中心となり売上拡大を実現することが不可欠である。

従業員の所得を増やすことで結婚・出産が増え、結果として人口減少に抗うことができる。

中小企業の売上拡大を実現することは、日本が抱える少子化問題の解決にもつながり、日本全体の人口減少を抑える力になるであろう。

終わりに

本冊子では、人口減少の現状や若者の手取りが低いことがもたらす課題を解説し、その解決策として中小企業の売上拡大が重要であることを示しました。

少子化問題は、一見すると遠い話のように思えるかもしれません。しかし、この問題は私たちの生活やビジネスに深く結びついています。若者の手取りが増えることで、結婚や出産が増え、少子化の解決につながるだけでなく、労働力不足の改善や地域経済の活性化、安定した雇用の確保など、社会全体に良い循環を生む可能性があります。それは、私たち一人ひとりの暮らしや事業の安定にも直結するでしょう。もちろん、こうした取り組みには時間がかかります。しかし、現状を維持するだけでは、少子化に歯止めをかけることはできません。私たちは縮小する社会に適応する戦略を進めつつも、未来に向けた成長の種を育てる努力を行う必要があります。その成長の鍵を握るのが、中小企業の存在です。中小企業が売上を拡大し、地域社会や日本全体を支える力となることで、若者の生活が安定し、次世代に希望を繋ぐことができるのです。

本冊子が、この課題を考えるきっかけとなり、行動に移す手助けとなれば幸いです。未来を見据えた取り組みを、ぜひ一緒に進めていきましょう。

謝辞

本冊子の作成にあたり、一般社団法人人口策総合研究所理事長の河合雅司様、データリサーチャーの小村乃子様には、多大なご支援をいただきました。河合様には、記事の内容を精査いただき、構成や表現の改善について多くの貴重なご助言をいただきました。また、小村様には具体的なデータの収集・分析の面でご協力いただき、本冊子内容の信頼性を高める大きな基盤となりました。お二人のご協力があってこそ、本冊子を完成させることができました。この場を借りて、深く御礼申し上げます。

こうした調査研究の活動が多くの中小企業およびスタートアップの経営者の皆様にとって、企業経営を少子化対策、人口減少対策、結果としての日本経済の規模縮小速度緩和の観点からも考えるきっかけとなれば幸いです。今後とも、多くの方々のご意見やご支援をいただきながら、更なる発展を目指してまいります。

皆様の温かいご支援に心より感謝申し上げます。


この記事を書いた人

片桐 豪志

株式会社Revitalize 代表取締役兼CEO

三菱総研、Deloitte、McKinseyを経てRevitalizeを創業。中小企業・SU・イノベーション・産学連携の政策・事業の企画立案・実行支援に強み。一番長くを過ごしたDeloitteではパートナーまで務め、イントレプレナーとして多数の新規事業立ち上げとスケールアップを実現してきた。より根本的な社会課題解決に取り組むべく、創業を決断。

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